早いもんで

もうすぐお盆やねぇ

毎年この時期になると思い出す調査がある

ずいぶん昔の話になるが

とあるカップルが乗る乗用車がハンドル操作を誤り

池に落ちてしまい運悪く2人ともが亡くなるという事故が起きた

山の中腹に大きな池があって

その池を囲むように道路が通っている場所

そこで事故が起きた

それから10年程経ってから

その池の周辺でおかしな噂が広まった


「深夜にその山道を通った時に、池の畔でカップルを見た」

「血だらけのカップルが立っていた」

「カップルが事故を起こしたカーブで事故が頻繁に起きている」

「そのカーブに差し掛かるとエンジンが止まった」

「夜、カップルでそこを通ると池の中に引きずり込まれる」



そのカップルの女性の両親が番長の母親の知人であったことから

話をする機会があり

聞くと


うちの娘は死んでまで他人様に迷惑をかけているのか

本当にそうであるなら御祓いをするのが親の責任だ

単なる噂だとは思うが聞く度に心が痛む



涙ながらに番長に話した


お婆ちゃん、俺に任せとき

出来る限り調べてみるからな



その夏の間、時間をみては調査をすることに

手の空いた社員を総動員するという形になったが

銭金の問題ではない

警察の事故状況

レッカー車の出動状況

周辺への聞き込み

可能なことは全て行い

出てきた結果は

案の定


『全てデマ』


幽霊とやらの噂はあれど

噂のネタ元に辿り着いても「見たような気がする」程度のもの

事故に至っては

その事故以来、1件の事故もない

それも、物損事故すらない

周辺にあるレッカー車を保有する整備工場やJAF等にあたるも

周辺への出動要請は、ほぼなく

あったのはJAF出動バッテリー上がり1件

しかも、昼間の現場から数キロ離れた場所にだ

夏も終わる頃

膨大な量となった報告書を抱えお婆ちゃんの元を訪ねた

番長の説明を聞き終えた後


ありがとね


涙を堪えながら小さな声で話し出す


でもね、噂があるのは何かあるからかもわからない

大袈裟なお祓いはともかく

お地蔵様だけはおいておきたい



どうして良いかわからない番長は

とりあえず管轄の警察に相談

地蔵を設置する許可はどうしたら良いか尋ねる

担当の警察官もよくわからないらしく

折り返し電話するとのことであったが

すぐにOKを貰い

秋頃には

池沿いの道路脇に小さなお地蔵さんが2つ並んだ

それ以降

夏場になるとTV等で心霊や幽霊の特集番組があっても

番長は一切見ない

番長はその手の類は怖くも何ともないし

仕事であればどんな暗闇の墓場だって

何日でも張り込んでやる

だって番長は探偵だから

自分が見たもの以外は全く信用しないし

番長の人生で

一度たりとも霊というものの存在を

この目で確認したことがないからな