子供の頃

父ちゃんは1人の弟子と
 ※番長は親父と呼ぶ

小さな寿司屋をやっていて

母ちゃんは大勢の弟子と
 ※番長はおかんと呼ぶ

大きな美容室をやっていた

寿司が大好きだったこともあって

暇さえあれば

口うるさい婆ちゃんがいる

実家から逃げ出し寿司屋にいた

ということで

必然的にご飯は婆ちゃんが作ったものか

寿司屋の賄い飯

とある夜のこと

その日の賄いはカレーだったのであるが

なにを考えたのか

婆ちゃんが

売れ残ったシャリ(寿司飯)に

勿体ないからと

カレーのルゥをかけちまった

そうして

番長たちは寿司のシャリにカレーという

とても組み合わせの悪そうな

カレーライスを食べることになった

その味はというと

非常に美味




といえば美談になるかもしれないけれど

現実はそう甘くはない

マジ

不味い・・・

父ちゃんとその弟子と共に

無言で食べたのを覚えている

それから大人になるまで

寿司のシャリにカレーをかけることなく

何十回となく

父ちゃんのカレーを食べたのであるが

母ちゃんのカレーは食べたことがない

そう

うちの母ちゃんは

仕事人間でご飯を作る機会がなく
 ※実際は作ろうともしなかった

とてつもなくご飯を作るのが下手なのだ

その後、父ちゃんの寿司屋が

場所を移転して

大きな料理店へと成長し

大勢の板前さんがいたので

母ちゃんの出番がなかったというのも

1つの原因なのかもしれない

そんなこんなで

全ての稼業を引退し

今尚健在な2人なのであるが

現在に至るまで

母ちゃんの食事は

父ちゃんが作っている

そんな父ちゃんがつくるカレーライスを

久しぶりに食べたんだ

うん

ココイチレベルに美味かった

ということで

無口な父ちゃんは

どう思っているかわからんけど

母ちゃんは

父ちゃんと一緒になったからこそ

今でも好き勝手できるのであって

たぶん

他の男だったら

ぶち切れて

離婚していたと思う

本人がそう言うのだから

間違いないんだろう



まあ

カレーライス1つにも

それぞれの家庭の味があるように

人生にも

それぞれ個々の考えがある

そんな中

自分はどうして生きていくか

正しい判断をすることが大切で

他人はこうだから

世間はどうだからと

固定観念という狭い世界だけで

生きていくと

窮屈でつまらない人生になってしまう

寿司飯とカレーライスという

どちらも最上級のご馳走なのだが

合わせてしまったら

とても不味くなるように

どちらも素晴らしい人格の持ち主でも

合わない相性というのもある

仕事でも

人付き合いでも

自分にとってどうなのか

早急すぎる判断は問題としても

過ぎ去った時間は

取り戻せないのだから

自分の性格を含め

落ち着いて冷静に判断をして

後悔が残らないように生きることだ

父ちゃんに

今度は番長が

カレーライスを作ってやろう

番長のカレーライスも

ココイチレベルに美味いのだ